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税務在宅勤務における通信費等に係る給与課税及び業務使用分の計算(甲府法人たより150号より抜粋)
東京地方税理士会 甲府支部 税理士 宮川 慎平

 新型コロナウイルスの感染防止対策として、「在宅勤務」を導入する会社が増えてきています。会社と従業員にとってメリットの大きい在宅勤務ですが、自宅での勤務が長引くにつれ、「勤務中に発生する費用を、会社と従業員のどちらがどこまで負担するべきなのか」という問題が浮上します。会社が在宅勤務に必要と認められる費用を支払った場合には、当然に会社の経費になりますが、同時に従業員に対する給与として所得税等が課税されてしまう場合もあります。
 令和3年1月に国税庁から「在宅勤務にかかる費用負担等に関するFAQ」が公表されましたのでポイントを抑えておきたいと思います。


1 「在宅勤務手当」を支給した場合
在宅勤務に通常必要な費用については
① 実際に業務にかかった費用を清算する方法で支給した場合
 → 給与として所得税は課税されません
② 在宅勤務手当等として一定額を精算不要として支給した場合
 → 給与として所得税が課税されます
 例としては、会社が従業員に対して毎月5,000円を渡切で支給した場合は給与として課税されてしまいます。ですが、その費用の実費相当額を精算する方法によるものであれば、従業員に対する給与として課税されません。

2 事務用品等(パソコン等)を支給した場合
 在宅勤務に通常必要な費用には、自宅の通信費や電気料金のうち業務に使用した部分の金額も含まれます。会社としてはどのように計算すればよいのか不明な点が多いと思いますが、これらの業務に使用した部分の金額の計算について次のような基準が設けられました。
① 業務に使用しなくなったときは会社に返却する場合
→ 給与として所得税は課税されません
②返却は不要とした場合
→ 給与として所得税が課税されます
 ①の場合は会社が所有権を有し従業員へ貸与しているだけなので、従業員に対する給与として課税する必要はありませんが、従業員に貸与するのではなく支給する場合(事務用品等の所有権が従業員に移転する場合)には、従業員に対する現物給与として課税されてしまいます。

3 通信費・電気料金の業務使用分の計算方法
①通信料
 通話明細書等で業務のための通話に係る料金を計算します。なお、営業担当者などの通話を頻繁に行う場合には、②の【算式例】による計算でも差支えありません。
②データ通信料や基本使用料
 データ通信料や基本使用料などについては、次の算式のように業務のために使用した部分を合理的に計算する必要があります。
 算式内の50%は、1日のうち睡眠時間を除いた時間の全てにおいて均等に料金が生じていると仮定した場合の労働時間の割合です。



③電気料金
 電気料金についても次の算式のように業務のために使用した部分を合理的に計算する必要があります。
この算式によらず、より精緻な方法で業務のために使用した基本料金や電気利用料の金額を算出することも可能です。



4 レンタルオフィス等の利用料を支給した場合
  自宅に在宅勤務をするスペースなどがない従業員に対して、自宅近くのレンタルオフィス等で在宅勤務することを会社が認めた場合など
①業務のために利用したものとして領収書等を会社に提出し、代金が清算されているもの
 → 給与として所得税は課税されません
② 精算不要もしくは領収書等を提出しない場合
 → 給与として所得税は課税が課税されます

 以上のようにポイントは、合理的な計算をしているか・実費相当額の清算といえるのかというところではないでしょうか。そのためには、在宅勤務の従業員が通信費や電気 料金の業務利用分を計算し、経理担当がチェックするという業務が発生し、従業員それぞれの負担が重くなるおそれがあるので注意が必要です。  


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